マチネの終わりに

先に原作を読んで、最近映画を観ました。

映画のすごいと思ったのは、見終わった後の気分が、原作の読後感とかなり似ていたところ。

ちょっと残念だったのは、(原作厨みたいになってしまうけど)原作を読んで感じた「運命に選ばれた者とそうではない者」との対比、葛藤があまり描かれていなかったこと。

蒔野と洋子という、才能と運命に恵まれ、それゆえに苦悩する「神様に選ばれた側」のふたりと、

どうあがいても彼らのようにはなれないし、彼らを手に入れられないことに苦しみ過ちを犯す「選ばれなかった側」の三谷やリチャード。

蒔野の若い頃の天才ぶりがあまり描かれておらず、しがないギタリスト感が出てしまっていたこと、リチャードの洋子に対する執着を示すシーンがカットされていたこと、三谷が嘘を打ち明ける理由が「嘘を抱えたまま生きるのが辛かった」ではなくなっていたこと、

などの小さな変更によって、彼らの人間性や位置づけがわかりづらくなっていたのかなと思った。長い小説を映画化するのって本当に難しいんだろうなあと感じた。

音楽は本当に良くて、中盤の洋子と移民の女の子へ向けた演奏がラストシーンでも行われるところは、映画だからこそより繋がって、感動した。

でも、だからこそ中盤のシーンも、映画の描写だけではケガをしたアシスタントの女の子が移民だとはわかりづらかったのは惜しいと思った。

それをほのめかすような台詞はあるんだけど、全体的に観る人の行間を読む力に委ねすぎていたと思う。

まあでも、説明過多だとロマンチックな雰囲気が出ないし、雰囲気がかなり大事な作品だけに難しいんだろうなあと…!

なんだかんだ、観た後の気分はとても良く、その点で素敵な映画だと思いました。